FCAJ理事Interview01 村田博信さん

■Q1. どんなご家庭で育ったのですか?

生まれは栃木。父が生命保険会社勤務のため、全国転勤を経験し、都内に落ち着きました。弟が2人。父は定年まで同じ会社で働きとおしました。もし今の時代だったら違う考えを持っていたかもしれません。

■Q2. 理工学部から、新卒でITコンサルに進んだ決め手は?

経営コンサルティングの仕事をしたいと何となく思っていて、大前研一さんの本とか読んでいました。当時、まだインターンシップはマイナーでしたが、メルセデスベンツの人事部インターンする機会がありました。当時すでに、一人ひとりのMBO(個人の目標設定を行い仕事のプランニングをする)をしっかりと行っていて、面白いと感じました。それに、これからの時代ITとか知っておいたほうが良いなと思ったので、ITコンサルに。新卒で入社を決めたSAPはドイツの会社で、様々な会社の経営も知ることができるし、業務フロー全体を見ることができて、ITリテラシーもやれる、また、日本に入ってきたばかりで若手にチャンスが多く、いろいろな経験ができる会社だと感じました。

■Q3. コンサルに興味を持ったのはいつ?

大学1年生の時にはじめたバックパッカーの経験からだと思います。大学に入学した頃に読んだ沢木耕太郎の「深夜特急」がきっかけで、世界を知らなきゃまずいと思って夏に一人でタイへ。それを皮切りにインドやアフリカなど、毎年出かけました。父の仕事ぶりもみていたので働き始めたらしっかり考えることができないと思って、大学の間に長期間旅行に行ったり、ぼーっと考える時間をできるだけとるようにしていました。アフリカは、世界各国から若者が集まるスタディツアーで。ガーナの砂漠にひたすら木を植える。英語でコミュニケーションをとることが必須でした。そんな中で英語力も身に付けました。特別な留学などはしていないんです。

なかでも、将来の仕事としてコンサルを具体的に考えたのは、大学3年生の時に行ったインドでのこと。たくさん読んでいた本の中でも、落合信彦の小説が好きでよく読んでいました。一度きりの人生、いろんなことを経験して人生エキサイティングに、というノンフィクションが多いものの、先進的な技術のことがでてきたりとビジネスの要素もすごくあって。それで、様々なプロジェクトに関わりながら、経営に携わってみたいとアタマにあったんですが…その影響からか、ある日朝起きたときに、急にスパークしたんです!「自分のやりたいことは!コンサルという形でできるんじゃないか!?」って(笑)

■Q4. 行動して経験して得たものが多そうですね!

百聞は一見に如かずだと思います。今はVRでもいろんな体験ができるけど、直接行って、五感で感じるようなものは大事だと実体験から思います。インドの、マサラみたいなスパイスのにおいのすごさとか。帰国したら家族から「くさっ!!!」といわれたり(笑)。その国の料理は、その国で食べるのが一番美味しいし、その土地の、その気候を体で感じながら食べるのは本当によい経験になります。経験にはいろんな要素があると思いますが、実体験した経験は豊かだと思います。

■Q5. FCAJに繋がるキャリアパスは?

社会人になってから、縁があって華道、茶道をはじめました。やってみたらとても面白くて、なんで今までこういう機会なかったのかなと思いました。日本人に生まれたからには、好き嫌いとは関係なく、もっと日本文化や芸術の本質を教えるような機会があるべきじゃないか、感性を育む教育をビジネスにできないかと考え始めました。

母校の恩師のゼミ生に対して手弁当で茶道・華道・古武術・書道など…いろんな文化に触れる体験講座を企画、実施すると評判もよく、全学の文化講座に話が発展したことはモチベーションにもなりました。

FCAJとの出会いは、紺野先生とのつながり。紺野代表の「知識デザイン企業」という本に感銘をうけて、先生にメールしたことがきっかけでした(インタビュアーびっくり!!)。日本文化のことを考え行動をはじめたタイミングで、「これからの企業は感性大事、美意識大事」ということが書かれていて、まさにそうだと思いました。SAPでの経験のなかで、システム構築も一種のアートだと感じていました。同じ要件でも、コンサル本人の美意識で全く違うシステムができてしまう。ロジカルでありながら、感性が求められる世界だなということを思っていました。変なアートを作ってしまうとその後のメンテナンスが大変なうえに、結局使われなかったりする…そんな熱い思いを紺野先生にメールさせていただいたところ、「Future Center研究会を立ち上げるけど、一緒にやらない?」というお話をいただき、今に至っています。

■Q6. FCAJでのプロジェクトを通して、実現したい社会

ひとりひとりが将来に希望を持てる社会をつくりたいと思っています。できるだけ格差をなくし、どこに住んでいても、どんな状況でも、誰もがが自分なりの希望を持てる社会を実現したいです。
そういう中では、STEM教育だけでなくて、アートや文化を起点にしたサービスやプロダクトにつながるような人材育成もあるべきと思います。日本人の感性に詰まっている「文化」こそが、他国との比較の中でも強い点だと思うから。ビックピクチャーではあるが、「美しい国」にしていきたいと思っています。住んでいる人の心も、環境もプロダクトも美しい国。海外から、日本はなくしてはいけない、と思われるようなこと、それこそが国力だと思います。そのためには、まずは一人ひとりの美意識を上げていくことが大切だと思っています。

■Q7. キャリアの描き方について、若手社会人へアドバイスを!

20代の前半に、50歳くらいまでのロードマップを作成したんです。年収がいくらになっている、こんな仕事、プライベートや趣味…など。そのとおりにはなっていないけど、ロードマップを作ることで、こんな暮らしをしたいんだ、こんなことで社会に貢献したいんだということに気づくことができました。何でもないようなお誘いも意味があるように感じられ、顔を出したことで本当に自分の世界が広がったり、思いもよらないところで、将来のビジョンが軌道修正されていったりなど。あまりカチカチにプランを決めてしまわず、計画には余裕を持たせて、軌道修正を怖がらず進むとよいと思います。

 


インタビュー:2022年1月23日(日)9時~10時
オンラインZoom
聞き手:中山みなみ
記録・編集:内原英理子(BAO)