7月29日に中央日本土地建物株式会社のオーナーで、「官民共創で次世代に向けたより良い社会システムを構想する」ことを目的に、テーマオーナープログラムを実施しました。
気候変動や国際情勢、テクノロジーの進化等で世界が大きく変わろうとする中、DXやGX、SXも含め社会全体としての変化が途上な日本において、中長期的な視点で官民が共創して社会のグランドデザインを描き推進するための場とエコシステムについて考えました。
参加者からは、「産官学民の多様なメンバーが集い、官民共創のあり方という高い視座で議論できた」「社会課題解決のために実践されている産官学金の皆様の話を聞きディスカッションできた」「産官学民連携について、一緒に活動できる場があると実感できた」などの声が寄せられました。
なお、会場の官民共創HUB(https://kanminhub.org)は、中央日本土地建物株式会社が2027年に開設予定の(仮称)虎ノ門イノベーションセンター(※)の前身として設立した施設であり、様々な省庁と官民共創による社会的インパクト活性化に向けた勉強会やワークショップ等が開催されています
※(仮称) 虎ノ門イノベーションセンターに関する今年1月のプレスリリースです↓
https://www.chuo-nittochi.co.jp/news/uploads/20240122_toraiti.pdf
<プログラム>(敬称略)
15:00 オープニング
15:05 官民共創HUBの紹介 -川島 興介(中央日本土地建物(株) 事業統括部イノベーション開発室リーダー)
15:20 パネルディスカッション
「官民共創で社会システムのグランドデザインを描き推進するための場とエコシステムとは? 」
<官の視点>千正 康裕( (株)千正組 代表取締役:元厚生労働省企画官)
<市民の視点>大西 連(認定NPO法人もやい 理事長 及び内閣府政策参与)
<企業の視点>加藤 昌治( (株)博報堂UoC プロデューサー)
<研究機関の視点>斉藤 卓也(情報・システム研究機構 副機構長、元文部科学省 産業連携・地域支援課長)
<金融の視点>大谷 智一((株)みずほフィナンシャルグループ/(株)みずほ銀行 サステナブルビジネス部)
16:30 <休憩>
16:40 グループディスカッション
17:30 全体シェア
17:50 ラップアップ
<官民共創HUBの紹介>
冒頭の官民共創HUBの紹介では、虎ノ門イノベーションセンター(仮称)のコンセプトとして、「官民共創によるエコシステムを構築し、社会的インパクト創出/活性化及び普及啓蒙による機運醸成を通して、「新たな企業成⾧の在り方の実現」「三方よしのインパクトエコノミーの形成」に貢献する」というアウトカム目標が共有されました。また、中央省庁との次世代政策に関する勉強会である官民ラウンドテーブルをはじめ、年間150件(2023年度)のプログラム誘致や主催勉強会などを通じて、「多様なステークホルダーと連携するうえで課題の立体化・構造化を図り、課題に対する関わり白を明確化することで自分事・自社事を進めていく必要があること」「課題の構造化を図るうえでは入り口部分で当事者を含むマルチステークホルダーによる議論が重要であること」「新しい価値観や個々のイノベーションを実装するためには、社会システムそのもののバージョンアップを官民一体で推進する必要があること」など新たに見えてきた課題の共有もありました。
<パネルディスカッション>
その後の産官学民金5者の立場によるパネルディスカッションでは、分断を越境しミクロとマクロの視点で社会システムの再構築を行っていく観点で以下4つをキーワードに議論がなされました。
① 分断の壁を取り払い接点を設ける
② 接点の中で互いのおかれた状況を知る
③ 議論を昇華させながらより良い次世代を共有し、そこまでの道程を描いてく
④ 描いた道程を共に歩みながら共感の輪を拡げ、三方良しの和をなす社会を作る
ルールメイキング等の政策を担う省庁では、「本来であれば現場や官民交流の場に赴く中で生の声を取り入れながら政策を作ることが望まれるところ、多忙を極める中で当該時間を確保できていない」という実態や「社会課題が複雑化するなか審議会などでの議論が小粒になっている」との現状も挙げられました。
また、NPOサイドからは「社会課題は身の回りにも多く存在し、実際に解決に向けて行動している団体も多く存在する中で、分断が埋まらない要因の一つとしては『関わり方がわからない』『その課題に対して深く知らない』といったことに対する心理的ハードルが挙げられるのではないか」「お互いを知る機会が増えるだけでもかかわり方を見出して連携が前に進むこともある」という見解がなされました。
議論を通して「分断の解消に向けてはマルチステークホルダーが集い互いを知るための接点をセッティングし共通目標となるビッグピクチャーを描いていこう」との共通項が見出されました。
一方で、「単に集まっただけではなく、議論を昇華し行動に落とし込んでいくことが重要であるところ、そのための進行役の役割がキーになる」との意見がなされました。具体的には、「意図をもって場をコーディネートすること」「議論を円滑に進行するためにゴールに向かって、意見を引き出したり、消極的な人がいたら意見を出しやすいようなムードをつくる」など、『潤滑油としてのファシリテート型』と、『自ら積極的に議論に参加して場の議論を積み上げていくジェネレート型』双方をうまく組み合わせながら議論を昇華していくことが重要であることが共有されました。
そうして生まれた社会インパクトにつながる事業を民間事業としていかにサステナブルに推進していくかという観点で、「中長期的な取り組みに関しても資金が集まる金融システム(インパクトファイナンス)の推進等が求められる」といった意見や、「消費者側としても価格ではなくストーリーに共感して消費行動を行うといった価値観・文化を浸透する必要があるなか、教育においても課題を自分事として捉え、何ができるかを探索し、アクションを起こすアクティブラーニング型の教育が浸透することで、行動に落とし込む癖をつけることも重要ではないか」との意見も出るなど、多岐にわたる観点での白熱したディスカッションが交わされました。
<グループディスカッション>
その後のグループディスカッションでは、ワークシートを用いて、官民共創で社会システムのグラウンドデザインを描き、推進していくために必要な「場」と「エコシステム」の在り方についてパネルでの論点も踏まえて議論しました。
今回の議論を通して、マクロとミクロの視点を行き来しながら次世代の社会システムを描き、官民共創でより良い次世代に向けた取り組みの実績を積み重ね、その知見を共有・伝播していくことで中長期的に社会のトランジションを起こすことにつながるのではないか。そのためには、政策担当者だけではなく、投票権を持ち消費生活者である市民、ビジネスで社会成長を導く民間事業者、研究と教育で知識創造を担うアカデミア、経済活動を支える金融資本、それぞれが共通のビジョンの基に領域横断的な議論やアクションが求められるのではないか、などが考察されました。
■一般社団法人官民共創HUBについて
官民の垣根を超えた多様な関係者による対話を通し、社会に対する新たな価値の提供を共に創る活動(官民共創)を推進するべく、ビジネス創出や交流を図る環境や場を整備するとともに、関係者間のコミュニティ形成に係る支援等を行い、社会課題に対して官と民が協働で解決に向け取組む社会の実現に貢献する。