6月26日に海外連携アカデミー企画として、「Nordic Ways of Innovation Thinking」をセミオープン形式で開催しました。今回は、イノベーションシティとして注目されるエスポー市と、フィンランドの科学技術イノベーションを牽引する国営のVTT技術研究センターとの共催で、ナレッジやテクノロジーを人間志向で社会実装する「北欧流イノベーション思考」を学びました。
ウェルビーイングを自分ごととしながら社会の目的を共有し、お互いの信頼関係のもとに力を合わせて共創するという示唆に富んだ話を伺い、チャットを通じても多くの意見交換がなされました。
ウェルビーイングを自分ごとしながら社会の目的を共有し、お互いの信頼関係のもとに力を合わせて共創するという、示唆に富んだ話を伺うことができました。
【セミナーの構成」
【プログラムタイムテーブル」
1.エスポ―イノベーションストーリー
メルビ・ヘイナロ氏 / Ms. Mervi Heinaro
エスポー副市⻑(経済開発・スポーツ・⽂化担当)
エスポー市がグローバルレベルでの課題解決に取り組むためのシステミックなアプローチとして、越境した革新的コラボレーション、目的の共有、信頼文化の醸成、ウェルビーイングありきのチャレンジ、など4つの柱があります。
具体的には、MSのデータセンターの排熱再利用や、VTTにおける研究者の感情気候(ウェルビーイング)とパフォーマンスとの相関関係などのインパクト事例が紹介されました。
またフィンランドは社会の階層がフラットな印象を持たれがちですが、現実はそこまでの理想でもない中で、いかにその意識を持つかが重要とのことでした。
2.アールトベンチャープログラム
ミョンジ・スー氏 / Ms.Myungji Suh
アアルト⼤学ベンチャープログラム事業部⻑
アールト大学のスタートアップセンターが大学発ビジネスアクセラレータの世界トップ3に入るぐらい、起業家教育が盛んで、起業がキャリア選択の1つになっています。
背景には、大学、高校、職業教育機関等が、汎用的なスキルとして起業家教育を積極的に実施したり、アールト大学発祥のスタートアップイベント“Slush”を学生が運営することでスタートアップがカッコイイという起業文化の醸成にもつながっているとのことです。併せて政府や公共セクターが、起業に必要な資金や人脈、リソースを得るサポートをし、産官学が一丸となってスタートアップを応援しています。
アールトベンチャープログラムでは、海外フィールドワークを通じてグローバル規模の課題解決を考える視座も養ったり、Starting Upという無料の起業プログラムを公開しています。またイノベーション担当の副学長を配置することで、大学単独ではないイノベーションエコシステムの形成も推進しています。
3.ノキアLuxTurrim5G
ユハ・サルメリン氏 / Mr. Juha Salmelin
ノキアLuxTurrim5G エコシステムリーダー
スマートシティのデータプラットフォームのインフラとして、センサーやカメラ付きのスマート街灯を設置。人やモビリティの流れや、エリア情報を収集・分析し、マケットプレイスで共有することで、他社のサービス開発に活用してもらったり、市民のウェルビーイングにつながる公共政策に役立ててもらう事業です。
ノキアは携帯電話での経験を活かしデジタルプラットフォームビジネスへ転換し、パートナー企業にとってのエンジンとなるエコシステムを形成いるようです。
4.フィンランドのイノベーションシステム
ユッシ・マンニネン氏 / Mr., Jussi Manninen
VTT エグゼクティブバイスプレジデント
VTTは、フィンランドの経済・雇用省傘下の公的研究センターであり、企業や大学、その他の研究機関、省庁、自治体等の戦略的パートナーとして、EUのリサーチファンド獲得も担っています。また、VTTからのスピンオフを支援するサイエンス・スタートアップ・インキュベーター“VTTラウンチパッド”により、多くのスピンオフ企業も生まれています。
フィンランドにおけるRDIの原則は、1.予測可能性と長期的アプローチ 2.レバレッジ効果 3.包括性 4.科学の自由と研究・教育の質 5.インパクト 6.競争力 7.協力 8.国際化 9.グローバルな課題 10.技術の中立性、などです。その研究例として、バイオテクノロジーを活用した食糧生産や、ケミカルリサイクルによるプラスチック問題解決、量子コンピューティングの社会実装などが挙げられました。