FCAJでは2023年10月にフィンランドへ遠征し、産官学民の視点からイノベーションエコシステムを視察し意見交換してきました。
この度、フィンランドのEnter Espoo、VTT技術研究センター、スタートアップなどが来日するに伴い、住友商事MIRAI LAB PALETTEの協賛で、来日メンバーとの交流プログラムを実施しました。
<プログラム概要>
【目的】欧州屈指のサステナブルでイノベーション都市であるエスポーにおけるエコシステムやスタートアップ創出の仕組みを知り、ネットワーキングを深める
【テーマ】FCAJエスポー交流プログラム 〜イノベーションエコシステムの実践
【日時】5月17日(金)15:00-18:30(受付14:45〜)
【会場】住友商事MIRAI LAB PALETTE(HUB会場)
<住所>東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル 2階
https://www.mirailabpalette.jp/access
【プログラム構成(敬称略)】
15:00 オープニング
15:05 MIRAI LAB PALETTEのご紹介
– 志津 由彦(住友商事, MIRAI LAB PALETTE ラボ長&オープンイノベーション リード)
15:15 プレゼン「ディープテックエコシステムの概要と事例」
– Jaana Tuomi(CEO, Enter Espoo)
15:35 プレゼン「未来洞察とシステミックアプローチによる社会実装イノベーション」
– Sanna Öörni、Kirsi Kotilainen(VTT技術研究センター)
16:15 パネル「起業家精神とスタートアップエコシステム」
– Ignaty Romanov (Head of Technology, Arctic Farming)
清水達生(Senior R&D Engineer, KUVA SPACE)
Pertti Kortejarvi(CEO, Smart City Innovation Cluster)
MC:清水眞弓(Senior Business Advisor、Enter Espoo)
16:55 休憩
17:10 プレゼン「エスポーイノベーション・ディープダイブの紹介」
– 清水眞弓(Senior Business Advisor、Enter Espoo)
17:10 グループダイアログ(2ラウンド)
18:15 ラップアップ
18:30終了、ネットワーキング
【エスポーからの登壇企業】
・Enter Espoo(https://www.enterespoo.fi):エスポー市のアクセラレーション企業
・VTT技術研究センター(https://www.vttresearch.com/en):フィンランドの科学技術を牽引する国営の応用研究センター
・エスポー発スタートアップ
-Arctic Farming(https://www.arcticfarming.io):宇宙技術を活用した屋内農法
-KUVA SPACE(https://kuvaspace.com):AIや小型衛星を活用した環境・農業・資源等の観測データサービス
・Smart City Innovation Cluster(https://www.scic.io):産官学でスマートシティを実践
冒頭に志津氏(住友商事)から住友商事のオープンイノベーション機能としてのMIRAI LAB PALETTEを紹介いただいた後に、Jaana氏(Enter Espoo)からエスポーのイノベーション文化の特徴として、多様な人材によるコラボレーションや、目的の共有、階層のない信頼関係、ウェルビーイング起点などが挙げられました。さらにはエコシステム事例として半導体や量子コンピュータの企業連合や、グリーンケミストリー(環境負荷の低い化学物質)やサーキュラーバイオエコノミーに関する企業・スタートアップ、教育研究機関などが集積する産業クラスター構想などを紹介いただきました。
続いて、VTT技術研究センターからSanna氏(Business Development Manager)とKirsi氏(Solution Sale Lead)が、行政を巻き込みながら取り組むカーボンハンドプリント(削減貢献量)の社会システムについてや、戦略的未来洞察のプロセス(シグナルスキャニング→シナリオ構想→戦略的アクション→アジャイル)などの包括的なアプローチを紹介されました。また具体的なケースとして感染症予防のための空調管理のエコシステムでは、子どもの感染症の減少による経済的なインパクトを算出され、常にアウトカムを意識した姿勢が印象的でした。
パネルディスカッションでは、まずPertti氏(Smart City Innovation Cluster)からスマートシティを包括的かつシステム的にとらえた上で、大企業のみならずスタートアップも自由に参加できるプラットフォームの説明がありました。続くIgnaty氏(Arctic Farming)からは、宇宙空間での野菜栽培技術を地上に応用することで省スペースかつ省エネの食糧生産キットを、最後に清水氏(KUVA SPACE)からは、ハイパースペクトラムとAIを活用し衛星から地上のバイオマスの生育状況や農場の収量予測、さらには海洋環境のチェックを実現する技術を紹介いただきました。
その後の議論では、このように宇宙×AI×サステナビリティなどを組み合わせた発想はエスポーイノベーションエコシステムならではのユニークなものであることや、衛星を飛ばす場所もラボから近かったり、高額な機器をサブスクリプションで利用できたりなど、あらゆる環境が整っているので、プレーヤーは自身の研究開発に専念できるメリットが述べられました。
後半は、清水氏(Enter Espoo)から、エスポーでのイノベーションを疑似体験できるディープダイブプログラムの紹介がありました。視察ではなく実際に何らかのプロジェクトにつながるような、特定テーマに基づいたVTTとのディスカッションや、Aalto大学のエグゼクティブカリキュラムへの参加などが用意されています。
最後は、今回の登壇者ごとに、エスポーのイノベーションコミュニティや、VTTの未来洞察とシステミックアプローチ、スタートアップエコシステムなどのグループに分かれて、参加者とフリーディスカッションをしました。
エスポーでのプログラムへの参加や、今後の連携につながる議論ができました。
■MIRAI LAB PALETTEについて
住友商事によるスタートアップ支援のみならず、ビジネスの分野から文化・芸術の分野に至るまでジャンルに捉われることなく、さまざまな人々が出会い、刺激し合う多様なプログラムやイベントを提供する場。